人生最後のダイエット

ウゴービを保険で処方されるのに必要な要件とは?肥満症の診断と健康障害について

新しく肥満症の保険適用されることに決まったノボ ノルディスク ファーマの肥満症治療薬・ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド(遺伝子組換え))ですが、適用要件の一つに「BMI≧27であり,2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する」とあることは、以前のコラムで紹介した通りです。
では、そもそも2つ以上の健康障害って、一体何が該当するのでしょうか?

今回は、そんなウゴービの保険診療での処方に必要な「健康障害」についてのお話です。

この健康障害については、日本肥満学会から2022年12月に刊行された「肥満症診療ガイドライン2022」を参考にして説明します。

日本肥満学会は2000年に、肥満者のなかから医療の対象となる集団を抽出するため肥満症の概念を提唱し、この概念に沿った診療の実施を推奨していました。
治療対象を体格指数(Body Mass Index: BMI, kg/m2, 以降単位は省略)のみで定義するのではなく、健康障害の合併や内臓脂肪蓄積に基づいて抽出するという考え方は、国際的にみても極めて先駆的なものと言えます。

肥満症診療ガイドライン2022は、それ以前の2016年版から約6年ぶりの改訂となり、刊行されましたが、今回の改訂においても、肥満および肥満症の定義は2016年版と同様のものとなっています。

まず、「肥満」とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI≧25のものと定義されます。
一方で「肥満症」とは、肥満があり、尚且つ、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態を「肥満症」と定義されています。

肥満に起因ないし関連する健康障害には、肥満症の診断に必要であるものと、診断基準には含めないものがあります。
その中で、減量によりその予防や病態改善が期待できるというエビデンスが一定程度以上蓄積されているものが、診断に必要な健康障害として、次の11項目挙げられています。

1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2)脂質異常症
3)高血圧
4)高尿酸血症・痛風
5)冠動脈疾患
6)脳梗塞・一過性脳虚血発作
7)非アルコール性脂肪性肝疾患
8)月経異常・女性不妊
9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
11)肥満関連腎臓病

この肥満症診療ガイドラインにおいて肥満症の定義に沿った11項目が、保険診療でウゴービを処方する要件にも関わるものと考えられます。
では、これらの健康障害の有無は、どのような検査を用いて診断されるのでしょうか。

1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2)脂質異常症
4)高尿酸血症・痛風
は、血液検査のみで診断可能な健康障害です。

7)非アルコール性脂肪性肝疾患
8)月経異常・女性不妊
これらについては、血液検査と腹部超音波検査とで診断可能な疾患です。

3)高血圧
5)冠動脈疾患
については、血圧測定と心電図が必要になってきます。

6)脳梗塞・一過性脳虚血発作
については、頭部MRI撮影が必要です。

9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
については、睡眠時の呼吸状態を評価できるPSG検査を用いて診断する疾患です。

10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
これについては、レントゲンやMRI撮影が診断に有用と考えられます。

11)肥満関連腎臓病
これについては、尿検査と血液検査の組み合わせで診断することができます。

以上をまとめると、ウゴービを処方する前には、血液検査や尿検査の他、超音波検査やレントゲン検査など、複数の検査を実施する必要がありそうです。

なお、内臓脂肪型肥満は健康障害の合併リスクが高いため、現在健康障害を伴っていなくとも肥満症と診断されます。
この場合、内臓脂肪を測定し、内臓脂肪面積≧100㎠が診断基準となります。

ちなみに、このガイドラインは、ウゴービの保険適用が決まる以前に刊行されたものであるため、ウゴービについての記載はありません。

肥満症診療ガイドライン2022の中で、GLP-1受容体作動薬の記載は、肥満症の診断に必要な健康障害のうち、耐糖能異常の項目に書かれています。
その中には、「GLP-1受容体作動薬およびSGLT2阻害薬は減量が期待できるため、肥満糖尿病患者にはよい適応である。」という記載があります。
これらは、小規模の無作為化比較試験や非無作為化研究があるエビデンスレベルIIであり、推奨grade Bとされています。
この推奨grade Bというのは、行うよう勧められる(その治療に対して種々の意見があるが、どちらかというと有用性がある)というものです。
少し先になるかと思いますが、次回のガイドラインの改定では、ウゴービ皮下注の処方のことが追記されることになるかもしれませんね。

今回、ウゴービの処方に必要な「健康障害」の定義と、それを診断するために必要な検査についてお話をしました。
ただ、言うまでもなく、ウゴービの処方と減量は、肥満症の治療においては、あくまで手段であり、目的ではありません。
皆さんには、合併症の適切な管理と治療のもと、健康的に減量をしていってもらいたいと思っています。

平山医師

医師

Hirayama Takashi

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