GLP-1受容体作動薬の種類によっての違い
前回に引き続き、今回は、Long actingタイプのGLP-1受容体作動薬に関してお話しします。
まず、長時間作用型GLP-1受容体作動薬の代表的なものに、リラグルチドが挙げられます。リラグルチドは、ノボノルディスク社が開発したビクトーザⓇとサクセンダⓇという1日1回製剤が存在します。
ビクトーザⓇとサクセンダⓇは、両剤とも同じノボノルディスク社が開発した「リラグルチド」なのですが、ビクトーザⓇは、糖尿病治療薬として日本国内において承認されているのに対し、サクセンダⓇは、肥満症の治療薬として、諸外国で認可されており、適応疾患が異なるGLP-1受容体作動薬です。
ビクトーザⓇの使用方法は、1日あたりの投与量を0.3,0.6, 0.9mgと段階的に増やしていきます。以前は、最大容量が0.9mgまでとなっていましたが、現在は、最大1.8mg/日まで使用できるようになりました。
一方、サクセンダⓇは、1日投与量を0.6, 1.2,1.8mg…と目盛を調整でき、最大容量が3.0mgとなっています。
また、他のLong actingタイプのGLP-1受容体作動薬として、「ビデュリオンⓇ」という製剤があります。
このビデュリオンⓇは、アストラゼネカ社の週1回製剤のGLP-1受容体作動薬です。
このビデュリオンⓇの主成分は、先述したバイエッタⓇと同じ、作用時間の短いエキセナチドなのですが、「マイクロスフェア」という合成高分子微粒子に包埋されています。
これは直径0.06mm、髪の毛の断面ほどの球体で、水と二酸化炭素に分解されながら1週間以上の長期にわたり薬物を放出することで、長時間作用が可能となっています。
ビデュリオンについて「ビデュリオンペンⓇ」という他のGLP-1注射製剤に比べて、かなり大きくて太いものとなっているのが特徴的で、見た目の大きさ太さから、使用を躊躇われる患者さんもおられます。
また、本体だけでなく注射針も23Gと、他のGLP-1製剤に比べて太いものが用いられているのですが、これはマイクロスフェアを壊さないようにするためであり、これ以上細くできないようです。
また、投与前に十分な混和が重要で、その点も慣れていないと、注射前の操作が少し煩雑に感じられるかもしれません。
なお、注射を継続していると、注射をした部位の皮下にしこりができてしまう方もしばしばおられますが、殆どの場合は2~3週間すれば消失していきます。
この対策としては、例えば、腹部を6分割して注射部位を毎週ずらす指導をするなどで対応していきます。
もう一つ、長時間作用型のGLP-1受容体作動薬は、デュラグルチドです。イーライリリー社により製造されている「トルリシティアテオスⓇ」は、主成分がデュラグルチドというGLP-1注射製剤であり、長時間作用型です。これは、IgG4抗体のFc領域にGLP-1アナログを2分子結合させ半減期を延長したものです。なお、この「トルリシティアテオスⓇ」は、製造はイーライリリー社であり、大日本住友製薬と併売しています。
週1回製剤ですが、デバイス「アテオス」は名前の通り「キャップを外し皮膚に当てて押す」だけの簡単なものとなっており、これはデバイスにバネがセットされ注入が容易になっている点で優れています。
そして、2020年には、新しい長時間作用型のGLP-1受容体作動薬セマグルチドが、日本で承認されました。ノボノルディスク社から「オゼンピックⓇ」という名前で発売されており、これもまた週1回製剤です。
オゼンピックⓇには、0.25mg,0.5mg,1.0mgの3種類の容量が存在します。
使い方としては、まずは初めの4週間は週1回0.25mgから開始し、その後週1回0.5mgに増量していきます。多くの場合、0.5mgで効果が期待できますが、もし週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができます。
週1回タイプのGLP-1製剤ですが、基本的にはあらかじめ決めた曜日に投与することになります。
しかし、もし投与を忘れてしまった場合は、次回投与までの期間が2日間(48時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与します。
逆に、次回の投与予定日まで2日間(48時間)未満であれば、もう投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与することになります。
なお、週1回投与の定めた曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも2日間(48時間)以上間隔を空ける必要があります。
なお、当院では、保険診療においての糖尿病治療では、上記のGLP-1製剤を、患者様の状態や生活様式に合わせて、使い分けをしています。
一方、ダイエットのご相談でGLP-1受容体作動薬を使用する場合は、リラグルチドを利用するケースがほとんどです。
その理由としては、このようにGLP-1受容体作動薬には様々な種類があるのですが、実際は、食欲抑制効果はその製剤によって異なります。
その中でも、リラグルチドは、世界的にも肥満症の適応があり、体重減少効果のエビデンスもあることが挙げられます。
また、週1回製剤が毎日注射をしなくてもいいから良さそう、という意見もあるのですが、1日1回製剤は、容量を微調整できるという利点もあります。
もちろん、最終的には、患者さんの状態や生活様式、副作用の有無などを総合的に勘案してどのGLP-1製剤にするかを選択することが必要です。
また、メディカルダイエットにおいて、何より大切なのは、安全に、健康的に、痩せるということに尽きるかと思います。
どんなお薬を使うにしても、使い方を間違えると、思わぬリスクに繋がります。
当院では、GLP-1製剤の使用経験が豊富な糖尿病専門医が、安全に、かつ効果的にダイエットが行えるよう指導致します。