人生最後のダイエット

糖尿病の新しい治療薬、イメグリミン塩酸塩(ツイミーグ®)について

現在まで、糖尿病の治療薬として国内で承認が得られている治療薬は非常に多くなってきています。中でもここ数年で大変多く処方されるようになった、GLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害剤は血糖降下のみならず、体重も減少させる治療薬としてよく知られています。最近の糖尿病の治療薬使用傾向としては、体重に影響を与えない、つまりは体重を増加させない治療薬が主流となってきています。

 

今回、全く新しい作用機序で血糖降下作用を発揮する治療薬、イメグリミン塩酸塩(ツイミーグ®)が発売されますので、その作用機序や血糖降下作用、副作用について、国内第3相試験(単独療法)からご紹介したいと思います。

 

イメグリミン(ツイミーグ)は、NAMPT (NAD+ 合成酵素)遺伝子、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰへの作用を介して、膵β細胞におけるグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制・糖取り込み能改善)とういう2つの作用機序で血糖降下を示します。これらの作用にはミトコンドリアを介した各種作用が関係していると推定されます。

 

では、イメグリミンの日本人2型糖尿病患者を対象にした単独療法第3相試験をご紹介します。この試験の主要目的は、日本人2型糖尿病患者を対象として、イメグリミン1000mgを1日2回(2000mg/ 日)経口投与したとき、投与24週間後のHbA1cを改善するかをプラセボと比較して評価することです。副次目的には、イメグリミンの安全性及び忍容性をプラセボと比較して比較することが含まれています。

 

本試験は、血糖コントロールが不十分な日本人2型糖尿病患者を対象としてイメグリミンの有効性、安全性及び忍容性を評価する、第3相、他施設共同、二重盲検、プラセボ対照、ランダム化、並行群間試験であった。本試験には、スクリーニング前12週以上、食事療法及び運動療法(生活習慣の改善)のみを行っていた患者、又はスクリーニング前12週間以上、1種類の経口血糖降下薬を一定用量で投与されていた患者が組み入れられています。被検者213名がイメグリミン1000mgの1日2回24週間経口投与又はプラセボの1日2回24週間経口投与に1:1の比でランダム化されました。

 

この試験の有効性評価項目ですが、HbA1cのベースラインからの変化量を主要評価項目としています。投与24週間後のHbA1cのベースラインからの変化量の平均値をプラセボと比較して評価しています。また、安全性評価項目として、有害事象、診察、体重、腹囲、BMI、バイタルサイン、12誘導心電図検査、臨床検査、空腹時血中尿酸値、尿中Alb/Cr 比、及び日本人用MDRD式によるeGFRが評価されました。

 

ランダム化された被検者213名の多くは男性(167名、78.4%)で、年齢の中央値は62.0歳(範囲:34~83歳)でした。ベースライン時における2型糖尿病の罹病期間の平均値(標準偏差)は、7.49年〔イメグリミン群 7.70年、プラセボ群 7.28年〕でした。

 

それではイメグリミンの有効性についてお示しします。日本人2型糖尿病患者を対象としてイメグリミン(1000mgの1日2回投与)の投与24週間後の有効性をプラセボと比較して評価した。有効性の解析は特に断らない限り、FAS集団212名(イメグリミン群106名、プラセボ群106名)を対象と実施されました。有効性の主要評価項目であるHbA1cは、イメグリミン群でプラセボ群と比較して統計学的に有意に減少した。FAS集団を対象とし、治療薬の投与中止の7日後までのデータを用いた主解析の結果、投与24週後のHbA1cのベースラインからの変化量について、イメグリミン群とプラセボ群の最小二乗平均の差(標準誤差)は-0.87% (0.09%)であった(p<0.0001)。

 

次に安全性についてですが、有害事象の発現割合は、イメグリミン群とプラセボ群で同程度でした。大部分の有害事象の重症度は軽度でした。有害事象を発現した被検者は、イメグリミン群で47/106名(44.3%)、プラセボ群で48/107名(44.9%)でした。イメグリミン群の2%以上で発現した有害事象は、上咽頭炎(17.0%)、咽頭炎(2.8%)、筋痙縮(2.8%)、及び低血糖(2.8%)でした。プラセボ群の2%以上で発現した有害事象は、上咽頭炎(8.4%)、高血糖(6.5%)、脂質異常症(2.8%)及び浮動性めまい(2.8%)でした。治療薬と因果関係ありと判断された有害事象の発現割合は、イメグリミン群で4.7%、プラセボ群で6.5%でした。個々の事象を発現した被検者数は、投与群間で同程度でした。最も多くみられた治療薬との因果関係ありと判断された有害事象は、イメグリミン群では低血糖(1.9%)、プラセボ群では高血糖(1.9%)でした。

 

以上より、新しい機序であるミトコンドリアを介した各種作用により、イメグリミンが安全に血糖を降下させることが示されました。個人的には、ミトコンドリアの機能改善による減量効果にも期待していましたが、国内第3相試験(単独療法)では減量効果は認められませんでした。今後、多種存在する血糖降下薬の中で、この新薬イメグリミンがどのような位置づけで使用されるようになるのか楽しみです

院長

Fumitaka Haseda

日本糖尿病学会、日本内科学会、日本ダイエットコーチング協会所属など、ダイエットに関して、しっかりとした知識と経験をもち、きめ細かいサポートで成功に導く寄り添う医療が信条のドクター。