サクセンダについて詳しく説明します
サクセンダとは
サクセンダは、FDA (米国食品医薬局)やEMA (ヨーロッパ医薬品許可当局)が、肥満症の適応で承認を得た食欲抑制剤です。
海外でのこの薬剤の治療対象者は、
1) BMI 30kg/m2 以上の方で、食事療法と運動療法で体重管理を実行している方。
2) BMI 27kg/m2 以上の方で、2型糖尿病、糖代謝異常など肥満に起因ないし関連する合併症を1つ以上伴う過体重の方。
となります。
なお、日本国内では、サクセンダは肥満症の適応で承認は得られておりません。日本では、サクセンダと同成分であるビクトーザが、2型糖尿病の適応で承認されております。
そもそもサクセンダとは
サクセンダとは、グルカゴン様ペプチド-1 (Glucagon-Like Peptide-1); GLP-1というホルモンの注射製剤です。サクセンダの主な活性成分はリラグルチドです。GLP-1とは、もともと私たちの小腸から分泌される消化管ホルモンの一種です。GLP-1は食事を摂取すると小腸にあるL細胞から分泌され、その一部が血液により膵臓へ運ばれます。膵臓にはインスリンを分泌するβ細胞という細胞があります。その細胞表面のGLP-1受容体に結合することで、膵β細胞からインスリンが分泌され、血糖値が下がるというわけです。一方で、膵臓では血糖値を上げさせる働きのあるグルカゴンも分泌されています。GLP-1は、食事を摂取するとインスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制することで、血糖値を低下させる作用があります。この作用により、日本ではサクセンダと同じ活性成分(リラグルチド)を含むGLP-1受容体作動薬であるビクトーザが、2型糖尿病患者さんに使用されています。この血糖値を下げる作用に加えて、食欲抑制効果や摂取した食物の胃からの排出を遅らせる効果が注目され、GLP-1受容体作動薬であるサクセンダは欧米を中心に、肥満治療に応用されるようになりました。
GLP-1受容体作動薬であるサクセンダの食欲抑制作用について説明したいと思います。
GLP-1には膵臓に働きかける作用以外に、脳に働きかけて食欲を抑える「食欲抑制作用」と、消化管の働きを緩やかにする「胃排泄遅延作用」があります。サクセンダは、視床下部の食欲抑制ニューロンに作用して、食欲亢進ニューロンを抑制することで、満腹感を増幅させ空腹感を減衰させます。例えるなら、いつも10食べてお腹が一杯と感じていたところ、5~7で満腹感を感じるようになるのです。
サクセンダとビクトーザの違い
サクセンダとビクトーザは、同じ活性成分(リラグルチド)を含むGLP-1受容体作動薬です。この二つの違いはデバイスにあります。両者の相違点を下に示します。
GLP-1受容体作動薬 |
サクセンダ® |
ビクトーザ® |
1回の最大投与量 |
3.0mg |
1.8mg |
1回投与量の調節 |
0.6㎎ずつ |
0.3mgずつ |
適応 |
肥満症(日本では未承認) |
2型糖尿病 |
サクセンダの糖尿病発症予防効果
サクセンダの主な活性成分はリラグルチド(GLP-1)です。前述しましたように、リラグルチドは膵β細胞からインスリン分泌を促進し、一方で、血糖値を上げさせる働きのあるグルカゴンの分泌を抑制することで、血糖値を低下させる作用があります。この血糖降下作用により、日本ではサクセンダと同じ活性成分(リラグルチド)を含むGLP-1受容体作動薬であるビクトーザが、2型糖尿病患者さんに使用されています。サクセンダを非糖尿病、肥満症患者に使用した海外の大規模臨床試験では、糖尿病発症予防効果も証明されています。血糖降下作用や食欲抑制による体重減少効果を考えると、当然の結果かもしれません。
サクセンダの副作用とは?
サクセンダの副作用ですが、消化管の働きを緩やかにする「胃排泄遅延作用」による消化器症状が主な副作用となります。日本で使用されているビクトーザでは、便秘(8.5%)、悪心(6.3%)、下痢(4.2%)が最も多い副作用です。その他、腹部不快感、消化不良、胃不快感、腹部膨満、嘔吐、上腹部痛なども3%以下ですが認めます。また、消化器症状以外の副作用としましては、稀ですが針を刺した部位に発赤・かゆみ・かぶれが見られる場合もあります。
サクセンダの使い方と注意事項
サクセンダの使用方法ですが、1日1回朝または夕に皮下注射します。1日1回、サクセンダの場合は0.6mg(ビクトーザの場合は0.3mg)から開始し、1週間以上の間隔で0.6mgずつ(ビクトーザの場合は0.3mgずつ)増量します。注射の使い始めや、増量のタイミングで、前述したような便秘・下痢・胃の不快感などの消化器症状が起こることがありますので、必ず担当医師の指導の下で増量していく必要があります。無理な増量により、便秘の悪化や胃の不快感、低血糖症状の出現などにより、生活の質が低下するようであれば、たとえ減量に成功しても適切な治療とはいえません。便秘・下痢・胃の不快感などの副作用は、少しずつ慣れていき、数日から数週間でほとんどの方が気にならなくなることが多いので、必ず専門医師の診察・指示の下で用量調節をおこなうようにしましょう。
サクセンダの保管・保存方法
サクセンダや注射針は、お子様などの手の届かないところに保存してください。次のような場所は避けて下さい。
- ほこりやゴミが付着しやすい場所
- 汚れやすい場所
- 水のかかりやすい場所
- 直射日光のあたる場所(窓辺など)
- 極端に高温(自動車内)または低温になる場所
個装箱及び本体のラベルに表示してある使用期限を過ぎたものは使用しないでください。注射は未使用の場合、冷蔵庫で保管してください。その際、凍結させないように、フリーザーの中や冷蔵庫内の冷風が直接あたるような場所には置かないでください。一度凍ったサクセンダは使用できません。使用中のサクセンダは室温(30℃以下)で保存して、使用開始後30日以内に使用してください。
サクセンダに関するその他のQ&A
サクセンダの治療は保険適応される?
日本国内では、サクセンダは肥満症の適応で承認は得られておりません。日本では、サクセンダと同成分であるビクトーザが、2型糖尿病の適応で承認されております。
サクセンダをやめるとどうなる?
サクセンダをやめると、食欲も戻ります。従って、サクセンダを使用中は、適切なカロリーでの食事療法を心掛け、その食生活を習慣付ける必要があります。サクセンダの使用により過剰な食欲を抑制し、無理のない食事制限が可能となり、正しい食生活を身につけることで、サクセンダを中止しても体重は戻りにくくなります。
サクセンダの妊娠中・授乳中の使用は可能?
現在までのところ、妊娠中及び授乳中のサクセンダ使用における安全性は確立されておらず、使用を控える必要があります。