人生最後のダイエット

基礎代謝量について

ヒトは、体格や身体組成および身体活動などに応じてエネルギーを消費し、それに見合ったエネルギーを摂取し、それらのバランスが取れた状態が基本となります。

エネルギー消費量を摂取量が上回った状態が続けば体重が増加しますが、体重の増加に伴うエネルギー消費量の増加などにより、新たなレベルでエネルギーバランスが成立し、体重は一定となるからです.
逆に、摂取量を消費量が上回った場合は、エネルギー不足の状態となるため、基礎代謝量(basal metabolic rate : BMR) エネルギー消費量が減少し、体重の減少は収束します。
もちろん、エネルギー摂取量もあわせて変動し、エネルギーバランスや体重を維持ベルの決定に寄与します。
以上のように、エネルギーバランスは、エネルギー消費量と摂取量の動的なバランスの上に成立しており、ある程度の幅のなかでエネルギー必要量は決定されることになります。
そこで「日本人の食事摂取基準(2015年版)」において、エネルギー必要量の定義は、「ある身長・体重と雌組成の個人が、長期間に良好な健康状態を維持する身体活動レベルの時、エネルギー消費量との均衡がとれるエネルギー摂取量」となっています。
さらに比較的短期間の場合は、「その時の体重を保つ(増加も減少もしない)ために適当なエネルギー」と定義されています。
そのため、エネルギー必要量は、健康状態を改善するために減量または増量が必要な者、良好な健康状態を維持する組織沈着がある小児・妊婦あるいは母乳分泌量に見合ったエネルギーを追加する必要がある授乳婦を除くと、総エネルギー消費量(TEE)とほぼ等しくなります。
なお、総エネルギー消費量(TEE)の内訳は、基礎代謝+身体活動(NEAT)+運動+熱産生(食事・寒冷刺激などによる)となっています。

ちなみに、疾病によっては、必ずしもエネルギーバランスがとれた状態、つまり、エネルギー消費量に等しいエネルギー摂取が望ましいとは限りません.例えば、減量が必要な肥満であれば、エネルギー消費量を下回るようにする必要がありますし、疾病からの回復や体重増加が期待される状態では、逆に上回るようにすることもあります.また、急性期においては、一時的に代謝が充進することもありますが、リフィーディング症候群と呼ばれる低栄養状態における栄養投与時の合併症もあるため、そのような状態では必ずしもエネルギーバランスを保つことが望ましいとは限りません。

基礎代謝量(BMR)は、覚醒状態における必要最小限のエネルギーを指します.一般に、約12時間以上の絶食、身体活動の影響がない状態、安静仰臥位で筋の緊張を最小限にした状態、25度程度の快適な室温で心身ともにストレスが少ない覚醒状態などの条件下で測定されます。

総エネルギー消費量(TEE)を基礎代謝量(BMR)で割った身体活動レベル(physical activity level : PAL)※1の標準値は、成人の場合、「日本人の食事摂取基準(2015年版)においても、また、欧米人においても1.75程度と考えられています。
ここから逆算すると、成人の場合、基礎代謝量(BMR)は総エネルギー消費量(TEE)の約60%程度を占めると考えられ、大多数の人において、基礎代謝量(BMR)は総エネルギー消費量(TEE)のなかで最も比率の高い構成要素です.基礎代謝量(BMR)は、骨格筋の緊張を最小限にした状態で測定されるため、骨格筋の代謝率(13kcal/kg/日)は、全身の平均(成人の場合20~24 kcal/kg/日程度)より明らかに小さいと言えます.骨格筋は除脂肪部分の約半分弱を占めるために、全臓器・組織のなかで基礎代謝量(BMR)測定時のエネルギー代謝量が最も大きい臓器ではある(全体の20%強)ものの、重量当たりのエネルギー代謝量は大きいとは言えません。

安静状態においては、むしろ、肝臓、脳、心臓、腎臓といった内臓の寄与が大きいです.脂肪組織は、重量当たりのエネルギー消費量が相対的に小さく、除脂肪部分の構成割合の個人差はそれほど大きくないので、除脂肪量(=体重一体脂肪量)がわかれば、基礎代謝量(BMR)をより高精度で推定することが可能となります。
基礎代謝量(BMR)は、同じ除脂肪量であったとしても、一般に女性より男性、高齢者より若年成人の方が大きいですが、これも、各臓器・組織の重量とそれらのエネルギー代謝率(kcal/kg/日)を考慮すれば、ほとんど差は消失します.そのほかに、食事制限などによってもたらされるエネルギーバランス、甲状腺ホルモン、疾病の有無や種類、自律神経活動、最大酸素摂取量などの変動要因があります。

このように、基礎代謝量(BMR)はTEEの最大の構成要素であるとともに体格の影響が大きいため、体重を含む推定式が数多く発表されています。
病院などでよく用いられるHarris-Benedict式は、高齢の男性を除くと、日本人に限らず、概して過大評価する傾向があるので注意が必要です。
ここでは、日本人を対象に妥当性の確認された基礎代謝量(BMR)推定式としては、国立健康・栄養研究所の式があります。

こちらでは特に、肥満ややせをはじめ標準的な体格から外れる場合には、体格などの変動要因を適切に考慮できるため、推定誤差が小さくなります。

BMR(kcal/日)=〔0.0481 x 体重(kg)+ 0.0234 x身長(cm)-0.0138 x年齢-0.5473 x (男性:1、 女性:2) +0.1238〕x1000/4.184

ダイエットにおいて、お食事のカロリーを気にされる方は、まずはこちらの計算式でご自身の基礎代謝量をチェックしてみることからはじめてみてはいかがでしょうか。

平山医師

医師

Hirayama Takashi

いつでも安心して、専門医に相談できるクリニックで、健康的なダイエットをサポートします。