人生最後のダイエット

「強化版GLP-1受容体作動薬」と期待されるチルゼパチド(マンジャロ)は肥満型に

GLP-1受容体作動薬の開発は、血糖降下作用だけではなく、肥満をターゲットに進んでいます。
2型糖尿病治療薬として使用されるGLP-1受容体作動薬ですが、抗肥満薬としての承認を控える薬剤が現れました。また、高い体重減少作用を有するGIP/GLP-1受容体作動薬も登場間近となりました。

2型糖尿病の治療薬として進化したGLP-1製剤が間もなく登場する見込みです。GLP-1受容体に加えてグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体にも単一分子で同時に作用する、GLP-1/GIP 受容体作動薬チルゼパチド(マンジャロ)です。

GIPとGLP-1は両者とも、食事摂取に応じて消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するインクレチンとして知られています。

GIPの薬理作用に関しては現在までのところ不明な点が多いですが、GLP-1と同様に食事摂取量の抑制、そしてエネルギー消費の増加などに寄与するとされています。GIPとGLP-1受容体を同時に刺激することで、薬剤としての効果が強まると考えられています。血糖降下作用、食欲抑制による体重減少作用ともに、現在まで使用されてきたGLP-1受容体作動薬を上回り、強化版GLP-1受容体作動薬といえるでしょう。

HbA1c改善効果、体重減少効果についてですが、日本人2型糖尿病患者を対象とした臨床試験において、チルゼパチド(マンジャロ)は単剤療法で、GLP-1受容体作動薬のデュラグルチド(トルリシティー)と比較して有意にHbA1cおよび体重を低下させることが示されました。
さらに国際試験では、こちらはメトホルミンとの併用療法になりますが、セマグルチド(オゼンピック)1mg (2型糖尿病に対する最大用量)より有意なHbA1cの低下、体重減少を示しました。投与後52週におけるベースラインからの体重減少は、デュラグルチド(トルリシティー)0.75mgで-0.5kg(-0.7%)、チルゼパチド(マンジャロ)5mgで-5.8kg(-7.8%)、10mgで-8.5kg(-11.0%)、15mgで-10.7kg(-13.9%)でした。この国際試験の有害事象ですが、悪心、下痢、嘔吐といった消化器症状でしたが、その発生頻度はセマグルチド(オゼンピック)と同程度でした。
食欲抑制による体重減少効果が従来のGLP-1受容体作動薬よりも大きいにもかかわらず、消化器症状を中心とした副作用が同程度であることは、GIPの作用が影響しているとも考えられています。
このように、チルゼパチド(マンジャロ)は、非常に高い体重減少効果作用を持ち、肥満を合併する2型糖尿病患者において有効な治療選択の一手になると期待されています。

しかしながら、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果を十分に得るには、その作用機序を患者様にしっかり理解してもらう必要があると私は考えます。この治療薬は、注射すれば体重が減少するといったシンプルな治療薬ではありません。

GLP-1受容体作動薬の体重減少効果は、中枢神経系における食欲抑制作用がメインの機序となります。従って、食事療法や行動療法と上手く組み合わせて、「食事量が減る」「食事の内容が変わる」といった食行動の変容を伴うことが必要不可欠なのです。

一方で、強い食欲抑制作用により、タンパク質やビタミンなどの必要な栄養素の不足に陥るリスクも考慮する必要があります。適切な栄養指導の下、糖尿病・肥満治療を継続することが重要です。