人生最後のダイエット

再生医療とは?幹細胞とは?分かりやすく解説

以前、「肥満と変形性膝関節症」のコラムで、再生医療の話をしましたが、今回はもう少し分かりやすく再生医療の解説をしてみたいと思います。

分化とは

そもそも私たちの身体は、約60兆個の細胞からできていますが、生まれる前は、たった1個の受精卵だったわけです。
その1つの細胞が分裂と増殖を繰り返して、多種多様な細胞に成長し、皮膚や脳、心臓といった組織や臓器がつくられていきますが、このように様々な組織や臓器に変化することを「分化」と言います。

なお、完全に分化し、皮膚や血液のように組織や臓器となった細胞を「体細胞」と呼ぶのに対して、これからいろいろな組織や臓器になれる未分化な細胞を「幹細胞」と呼びます。

幹細胞について

このように、幹細胞(Stem Cells)とは、多くの異なる細胞タイプ(血液細胞、神経細胞、筋肉細胞、脂肪細胞など)に分化する能力を持ちますが、生体内に存在する幹細胞は、大きく下記の2つに分類されます。

1. 胚性幹細胞(Embryonic Stem Cells)

胚性幹細胞は、ES細胞とも呼ばれ、初期の胚(通常は胚盤胞ステージ)から取得されます。これらの幹細胞は、ほとんどの種類の体細胞に分化できる多能性(pluripotent)を持っており、非常に多くの細胞タイプになることができます。胚性幹細胞は研究や再生医療において重要な役割を果たしますが、倫理的な問題や使用に関する規制が存在します。

2. 成体幹細胞(Adult Stem Cells)

成体幹細胞は、体性幹細胞とも呼ばれ、成体組織や臓器から採取される幹細胞です。
成体幹細胞にはいくつか種類がありますが、その代表的なものに「間葉系幹細胞」があります。
「間葉系幹細胞」は、骨、軟骨、脂肪細胞などいくつかの異なった組織や臓器に分化する能力があります。
これらの幹細胞は、特定の細胞タイプに分化する能力を持ちますが、通常はその組織または臓器の再生と修復に関与します。
成体幹細胞は多能性が制限されており、ある程度の分化方向性を持っています。
例えば、造血幹細胞は血液細胞に分化し、神経幹細胞は神経細胞に分化します。

なお、これらに加えて、人工的に作製される幹細胞があり、「iPS細胞」と呼ばれる幹細胞もあります。
iPS細胞は、2006年8月に京都大学の山中伸弥教授らが世界で初めての作製に成功し、2012年にノーベル賞を受賞されたもので、ご存知の人も多いかもしれませんね。

幹細胞治療について

これらの幹細胞の中で、最も医療への応用が進んでいるのは「成体幹細胞(体性幹細胞)」を用いた治療です。
人間の体の中にもともとある細胞を使うため、治療に応用しやすい特徴があります。

そして最近、その中でも特に注目され始めているのが脂肪由来の間葉系幹細胞です。

以前から、骨髄の中にあることが発見されていた「間葉系幹細胞」は、治療が困難な脊椎損傷や肝機能障害などの治療に期待されて研究されてきました。
ところが、骨髄由来の幹細胞は採取できる量が限られており、 なかなか実用化が難しいという問題がありました。
そんな折、2001年に脂肪由来の「間葉系幹細胞」が、骨髄由来のものと同等の能力があり、なおかつ、より大量に確保できる利点があることが分かり、脂肪由来の幹細胞を関節軟骨などの再生治療に応用する研究が進んできました。

実際に、変形性膝関節症の治療に、脂肪由来の幹細胞自家移植を行った症例を見たことがあります。
幹細胞自家移植というのは、患者自身の腹部などの皮下脂肪を少し採取し、その中の脂肪由来の幹細胞を培養した後に、それを患者の膝関節内に投与するという治療のことです。

そういった治療を受けられた患者様の中には、痛みで歩行困難だった人がスタスタと歩けるようになった劇的な著効例も見受けられます。
これは、従来の痛み止めやヒアルロン酸注入などの治療では見られない改善度合いであり、驚きと感動すら覚えます。
文字通り「これこそ再生医療」と感じる一例ですが、何よりも、人工関節という大掛かりな治療を回避でき、昔のように元気に歩けるようになったことは、患者様にとっても大きなことだと思います。

まとめ

再生医療は、変形性膝関節症や脊髄損傷にも試みられている他、糖尿病や肝障害への治療なども試みられており、今まで有効な治療がないと諦めていた疾患に対する新しいアプローチとして期待されていますし、美容医療にも応用されつつあります。そのあたりについても、今後このコラムで紹介していきたいと思います。

平山医師

医師

Hirayama Takashi

いつでも安心して、専門医に相談できるクリニックで、健康的なダイエットをサポートします。