人生最後のダイエット

「メトホルミンでダイエット」は危険!?その効果とリスクを徹底解説

メトホルミンは糖尿病治療薬として世界中で広く使用されていますが、最近では美容クリニックなどで「メトホルミンダイエット」と称し、「ダイエット薬」としても売られています。
実際、インターネットやSNSでも、メトホルミンを服用して痩せたという声が散見されます。
しかし、健常者がダイエット目的でメトホルミンを使用することには、効果以上にリスクが伴います。
本記事では、メトホルミンの体重減少効果と潜在的なリスクについて、科学的なデータを基に詳しく解説します。

メトホルミンとは?|糖尿病治療薬の基本を押さえる

メトホルミンは、2型糖尿病患者に対して使用される薬で、肝臓での糖新生を抑制し、インスリン感受性を高めることで血糖値を下げる効果があります。
これにより、糖尿病患者の血糖値が安定し、合併症のリスクが低減されます。
また、食後の血糖値上昇を抑える作用もあり、糖尿病患者の治療には欠かせない薬剤です。

しかし、ここで注意が必要なのは、メトホルミンは糖尿病の治療を目的としたものであり、健常者のダイエットを目的とした使用には適していないという点です。
糖尿病患者に対しては有効ですが、健常者がこれを使用することには、効果的でないばかりか、健康リスクを引き起こす可能性があります。

実際に痩せるの?|科学が教えるメトホルミンの真実

いくつかの研究により、メトホルミンを服用した糖尿病患者が平均2〜3kgの体重減少を経験していることが報告されています。
これは糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善することによるものであり、結果として体重減少が見られるケースがあるのです。
しかし、この体重減少効果は、糖尿病患者に限られたものであり、健常者において同様の効果が期待できるわけではありません。

さらに、2024年に発表された研究では、5:2の間欠的断食(週に5日間の通常食と連続しない2日間のカロリー制限食(1200~1500kcal/day))を実施したグループが、メトホルミン使用者に比べて顕著に優れた体重減少効果を示したことが報告されています。
この研究では、断食を行ったグループが16週間で平均9.7kgの減量を達成し、これはメトホルミンを服用していたグループの減量効果(平均5.5kg減)を大きく上回る結果となりました。

この結果からも、メトホルミンに頼らずに、間欠的断食によって健康的に体重を減少させる方が、ダイエットに有効な手段であることが示唆されています。

メトホルミンの副作用|リスクを知って、それでも本当に使う??

メトホルミンは糖尿病患者にとって比較的安全とされる薬剤ですが、ダイエット目的で使用する場合には注意が必要です。
代表的な副作用には、吐き気、下痢、腹痛などの消化器系の症状があり、これらは特に治療初期に顕著に現れることがあります。
また、もっとも懸念される副作用として、乳酸アシドーシスがあります。
この状態は血中に乳酸が過剰に蓄積し、酸性度が危険なレベルに達することで命に関わる可能性があるものです。

メトホルミン関連の乳酸アシドーシスの発生率は非常に低く、約0.03〜0.05件/1000人年と報告されていますが、一度発症すると死亡率は約30%〜50%と非常に高いことが知られています。
このため、リスク因子がある人の場合、特に腎機能が低下していたり、脱水症状がある場合には、メトホルミンの使用には特に慎重な判断が求められます。

また、長期間のメトホルミン使用によりビタミンB12欠乏症が引き起こされるリスクも報告されています。
ビタミンB12の不足は、貧血や神経障害を引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。
特にダイエット目的でメトホルミンを使用する健常者にとって、これらのリスクは無視できません。

「メトホルミンダイエット」を謳う美容クリニックでは、これらのリスクについてどの程度認識されているのか、患者としても確認する必要があるでしょう。
安全性を軽視したダイエットは、短期間での体重減少以上に、長期的な健康リスクを伴う可能性があることを理解することが重要です。

結論|メトホルミンでダイエットは賢明ではない

メトホルミンは、糖尿病患者にとって有益な薬剤であることは間違いありませんが、健常者がダイエット目的で使用することは非常にリスクが高いと言えます。
特に、最近の研究で示されたように、間欠的ファスティング(断食)は、メトホルミンに依存せずとも大幅な体重減少を達成できる効果的な方法であることが明らかになっています。

これらの事実を踏まえると、健常者がメトホルミンをダイエットのために使用するのは賢明ではありません。
健康的なダイエットには、バランスの取れた食事と適度な運動が最も効果的であり、リスクを最小限に抑えるためにも、自然な方法で体重管理を行うことが推奨されます。

参考文献
【1】Lilly, M., et al. (2011). “Metformin in patients with type 2 diabetes: effectiveness, safety, and clinical guidelines.” Diabetes Care, 34(Supplement 2), S33-S44.
【2】Lixin Guo et al. (2024). “A 5:2 Intermittent Fasting Meal Replacement Diet and Glycemic Control for Adults With Diabetes,” JAMA Network Open.
【3】Misbin, R. I., et al. (1998). “Lactic Acidosis in Patients with Diabetes Treated with Metformin.” New England Journal of Medicine, 338(4), 265-266.
【4】Misbin, R. I., et al. (1998). “Lactic Acidosis in Patients with Diabetes Treated with Metformin.” New England Journal of Medicine, 338(4), 265-266.
【5】de Jager, J., et al. (2010). “Long term treatment with metformin in patients with type 2 diabetes and risk of vitamin B-12 deficiency: randomised placebo controlled trial.” BMJ, 340, c2181.

平山医師

医師

Hirayama Takashi

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