栄養素の基本のき 「糖質ってなぁに」
突然ですが、皆さんは「糖質」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?「糖質制限ダイエット」、「糖質オフ」など糖質を制限するような言葉を最近ではよく聞くようになりました。
そこで今回はこの「糖質」に着目していきたいと思います。糖質を摂ることでヒトの体内で何が起こっているのか、摂りすぎや、反対に不足するとどのような影響があるのか、また、ダイエットとの関連についてもお話させていただきたいと思います。
三大栄養素というとタンパク質、脂質、炭水化物は皆さんご存かと思われますが、この中の「炭水化物」が糖質の正体なのです。炭水化物の中でも2種類に分類され、ヒトの体内で消化・吸収できる「糖質」と消化・吸収できない「食物繊維」に分かれます。
ちなみに食物繊維とは「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と日本では定義されていますが、実際には腸内細菌の分解の程度によって1gあたり0~2kcalのエネルギーを生み出しています。また、善玉菌を増やし、腸内細菌を改善することで便秘予防としての働きもよく知られています。代表的な食物としてゴボウやひじき、海藻類などがあげられます。
では糖質に話を戻します。まずは体内での働きについて説明していきます。
糖質は体内で消化・吸収されて単糖類であるブドウ糖に分解されます。ブドウ糖は血液を通して各細胞に運ばれ、身体を動かすエネルギーとして利用されます。また、脳や神経組織、赤血球などは通常の場合、主にブドウ糖をエネルギー源として利用するため、糖質はそのような組織にエネルギーを供給する大きな役割があります。
また、糖質を摂取すると膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンは血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあるため、たくさんの糖質を摂取すると、エネルギーとして利用されなかったブドウ糖が脂肪細胞へと送りこまれていきます。そうして脂肪細胞に送り込まれたブドウ糖は、ここで中性脂肪となって私たちの身体に蓄えられてしまうのです。最終的に脂肪が増えることで肥満と呼ばれる状態になると、糖尿病をはじめ様々な生活習慣病のリスクが上昇してしまいます。
そこで糖質制限を行うと、糖質の摂取量が少ない分、血糖値(血液中を流れるブドウ糖の濃度)の上昇が少なくなり、インスリンの分泌量も減少します。そうすることでインスリンの働きが穏やかになり、その結果脂肪がつきにくくなります。糖質制限ダイエットはこのようなメカニズムとなっています。
では実際にどのような食べ物が糖質を多く含んでいるのかに加えて、糖質制限ダイエットについてより詳しくお話していきたいと思います。
まず糖質を多く含む食べ物ですが、大きなくくりで言うと「主食」です。お米やパン、パスタ、うどん、そば、コーンフレークなど食卓に主食として並ぶものは基本的に糖質を多く含んでいます。その他にも、さつまいもやじゃがいもなどのイモ類、砂糖や黒糖、蜂蜜などの甘味料も多いです。余談ですが、米や小麦が糖質を多く含むためアルコール飲料類に関しても日本酒やビール、シャンパンも多く、反対にウイスキーや焼酎、ブランデーなどの蒸留酒にはほとんど含まれていません。糖質制限ダイエットを行って実際に体重が減少したという方も多くいらっしゃるとは思いますが、3食ともご飯やパンを食べる方にとっては急に厳格な糖質制限を始めても、体調を崩したり、挫折したりしてしまうのが現状ではないでしょうか。
糖質制限ダイエットの場合、主食を抜くことでつい食事量の全体を減らしてしまいがちになり、結果として身体に必要なエネルギーまでも不足してしまいます。そうするとエネルギー源となるブドウ糖を筋肉から作りだすようになってしまうため、筋肉量が落ち、基礎代謝量も落ちることにつながります。体重は減ると思いますが、とても不健康な痩せ方になってしまいます。そうならないためには糖質をある程度制限する分、タンパク質や油(できればサラダ油よりもオリーブオイルやえごま油の方が良い)を積極的に摂取していくことが必要です。タンパク質は鶏肉や豆腐などが多く含んでいるイメージが皆さんもあるかと思いますが、プロテインなどの高たんぱく食品を活用するのも1つの手段だと思います。
痩せることで「綺麗になりたい」、「自分に自信を持てるようになりたい」という思いはとても素敵なことだと思いますが、極端なダイエットが過度なストレスとなり体調を崩してしまったり、継続できずリバウンドしたりしてしまっては元も子もありません。糖質制限も含め、現代にたくさんのダイエット方法がある中で自分に合ったものを見つけるのは中々困難なことかもしれませんが、自分が興味をもったものをとりあえず始めるのではなく正しい知識をもって、自分の身体と相談しながら進めてほしいなと思います。
最後は話が逸れてしまいましたが今回は糖質に着目し、糖質の働きからダイエットとして摂取量を減らす時の注意事項までお話させていただきました。ダイエットの分野において注目されがちな糖質ですが、ヒトの身体にとって非常に大切な役割を担っていることを知っていただければなと思います。これを機に皆さんも自分の食生活を見直し、健康的な食事について一度考えてみませんか。