ケトン体で体脂肪を燃やす
私たちは、日常生活をするのはもちろん、何もしなくても呼吸をしたり心臓を動かしたり、生きているだけでエネルギーを消費します。
私たちは、口にする食べ物のうち、糖質・タンパク質・脂質からエネルギーを生み出します。現代人の一般的な食生活のバランスで言えば、ごはんやパン、麺類など炭水化物が主食となっており、これらは消化管で消化されることで、糖質の最小単位であるブドウ糖にまで分解され、このブドウ糖が主なエネルギー源となっています。
なお、肉や魚などのタンパク質は、アミノ酸に分解され、脂肪は、脂肪酸に分解されます。
消化管で分解されてできたブドウ糖やアミノ酸は、血中を通して肝臓に運ばれ、脂肪酸は主にリンパ管を通って肝臓に運ばれます。
ブドウ糖は、肝臓から血液に送られて細胞に入り、エネルギー源となります。アミノ酸は、肝臓でタンパク質に合成されて、内臓や筋肉になって身体の重要な構成要素となります。脂肪酸は、コレステロールに合成され、様々なホルモンの材料になりますので、これらも身体の重要な構成要素となります。
長い間空腹状態が続くと、飢餓状態となりますが、この際は血液中のブドウ糖濃度、すなわち「血糖値」は低下します。そうなると、脳から「ブドウ糖が足りないから、食事をしなさい」という指令が出て、人は「お腹が空いた」と感じ、何か食べよう」と思うのです。お腹が空いたというのは、血糖値が低下したサインなのですが、そのまま食事をしない状態でいると、身体内のアミノ酸をブドウ糖に変換して、エネルギーとして利用しようとします。この反応を「糖新生」と呼びます。肝臓に蓄えられたアミノ酸だけで足りなくなると、次は筋肉を分解して肝臓にアミノ酸を送り込んで、ブドウ糖を作ろうとします。
なお、脂肪酸もエネルギー源として利用されます。
体内で利用できるブドウ糖が足りなくなった時には、体脂肪を燃やしてエネルギーを生み出されるのですが、その際に脂肪酸から作られるエネルギー源が「ケトン体」と呼ばれるものです。
つまり、私たちの身体は、「ブドウ糖」と「ケトン体」がエネルギー源となっているのですが、このケトン体は、食事で糖質をたくさん摂取している状態では生成されません。
なお、ブドウ糖をエネルギー源として利用している状態を「グルコジェニック」、ケトン体をエネルギー源として利用している状態のことを「ケトジェニック」と呼びます。
よく、「ご飯を食べないと力が出ない」という人がいますが、これはグルコジェニックな状態であると言えるでしょう。
近年、糖尿病や肥満など、生活習慣病を患う人は、今なお増加傾向にあります。これらは、動脈硬化を促進して脳卒中や狭心症などの心臓発作を発症する危険のある病的な状態です。
そして、その原因に最も大きく関連しているのが、「糖質の摂り過ぎ」なのです。
「そんなに甘いものとか、摂っていないのだけどなあ」という方もいるかもしれません。
ですが、実は、現代社会で当たり前になっている「糖質中心の食事」が元凶だったりします。
ハンバーガーやおにぎり、サンドイッチ、うどんやラーメンなど、コンビニやファストフードですぐに食べられるものには、たくさんの「糖質」が含まれています。
たとえ、甘いものやお菓子を食べていなかったとしても、炭水化物を主食とした食生活を続けていると、いつの間にか糖質過剰の状態になっていることがしばしばあります。
実は、ヒトのこの「糖質中心」の食生活は、稲作など穀物を栽培する農耕文化が始まった1万年前くらいから、徐々に始まり、近年になり急速に加速していったとされています。
そもそも、地球上に人類が登場したのは、約500万年前と言われていますが、その後、二足歩行するようになり、火や道具を使って進化を遂げ、約250万年前から動物や魚を狩猟したり、木の実や果物を採集する生活が始まったとされています。なお、その当時の人類の主なエネルギー源は、動物や魚、木の実などに含まれる脂質とタンパク質で、エネルギー源のうち、およそ75%を脂質、20%をタンパク質から摂取していたと考えられています。
そこから、農耕文化により、米や小麦などの炭水化物が食事の中心となり、様々な技術が進歩するにつれて、人類のエネルギー源は、炭水化物中心へと変わっていきました。
そして、時代が進むにつれ、作物の品種改良が重ねられて、より大量の作物が安定して生産できるようになった結果、より安価で大量の炭水化物が確保できるようになりました。
そして、大量の炭水化物が手に入るようになったとともに、人類はより美味しく豊かな食生活を求めるようになりました。美味しく食べられる工夫を凝らした結果、不純物を取り除き、より精製した糖質を手に入れるようになってきて、現代に至るわけです。こうした歴史的な背景があり、人類の「糖質過多」が当たり前になってしまったわけですが、これが現代人の肥満を引き起こしているのは、言うまでもありません。
話をケトン体に戻しますが、ダイエットをする上では、「脂肪燃焼」が非常に重要で、体内でケトン体が生成され、ケトジェニックな状態であることが望ましいと考えられます。
しかし、このケトジェニックな状態にするためには、ブドウ糖が少ない状態にしなくてはなりませんが、特にこの飽食の時代、我々現代人にとっては、「ブドウ糖がない状態」を作り出すことは、ご自身で食事内容を注意して、意識的に炭水化物や糖質を摂らないように心掛けなければ、容易ではありません。
なお、このケトジェニックな状態を続けることで、脂肪燃焼を促すダイエットを「ケトジェニックダイエット」と呼びますが、ケトジェニックダイエットに関しては、また別のコラムでその概要を説明したいと思います。