耐糖能障害と糖尿病の違いとは?原因と症状の違いを知り早めの対策を

糖尿病の前段階として「耐糖能障害」と呼ばれる状態があります。
また、健康診断を受けたときに「耐糖能障害と書かれていたけど、どのような状態なのか分からない」という方もいるでしょう。
この記事では、耐糖能障害と糖尿病の違い、原因や症状の特徴を詳しく解説します。
この記事を通じて耐糖能障害の理解を深め、糖尿病への進行を防ぐために役立ててもらえると幸いです。
【耐糖能障害とは】
耐糖能障害とは、血糖値が正常より高いものの糖尿病と診断されるほどではない状態のことです。
他にも「糖尿病予備軍」や「境界型糖尿病」と呼ばれることもあります。
この段階でも、糖尿病と同様に動脈硬化が進行するといわれており、心血管疾患のリスクを高める要因になります。
特に食後に高血糖となることが多く、見逃されやすいのが特徴です。
放置すれば糖尿病に進行するリスクが高く、早めの対策が求められます。
【診断基準】
(空腹時血糖値 / 経口ブドウ糖負荷試験・2時間値 / HbA1c)
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正常値:<100 mg/dL / <140 mg/dL / <5.7%
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耐糖能障害:100~125 mg/dL / 140~199 mg/dL / 5.7~6.4%
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糖尿病:≥126 mg/dL / ≥200 mg/dL / ≥6.5%
空腹時血糖やHbA1cに加え、75g経口ブドウ糖負荷試験が正確な診断に有効です。
※当院では経口糖負荷試験は実施しておりません。
【耐糖能障害と糖尿病の違い】
耐糖能障害は糖尿病の予備軍にあたりますが、明確に区別されます。
以下では「原因」と「症状」の違いを解説します。
● 原因の違い
・耐糖能障害
→ インスリン分泌の低下、インスリン抵抗性、生活習慣(食事・運動不足)などが関与します。
・糖尿病
→ 1型は自己免疫によるインスリン分泌細胞の破壊。
2型は生活習慣や肥満が主因。耐糖能障害は主に2型糖尿病の前段階に近い病態です。
● 症状の違い
・耐糖能障害
→ 多くの場合、自覚症状なし。ただしまれに多飲・多尿・口渇など軽度の症状がみられることも。
・糖尿病
→ のどの渇き、頻尿、体重減少、疲労感などの症状があり、進行すると神経障害、網膜症、腎症、動脈硬化などの合併症につながります。
【耐糖能障害になりやすい人の特徴】
耐糖能障害は、以下のような方に多く見られます:
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加齢
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肥満
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糖尿病の家族歴
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高血圧の既往
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喫煙習慣
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飲酒習慣
特に以下に該当する方は注意が必要です:
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成人してから5kg以上体重が増加した
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中年期に急激に体重が増えた
【やせ型の若い女性も耐糖能障害に注意】
かつては「耐糖能障害=肥満」が常識でしたが、最近の研究で「やせ型」でも発症することが分かっています。
特に、標準体重の女性に比べ、やせ型の女性は耐糖能障害の発症リスクが約7倍になるという報告もあります。
これは、筋肉量の少なさやインスリン抵抗性、脂肪組織の異常、栄養バランスの悪い食生活などが関係していると考えられます。
● なぜやせていても糖尿病になるのか?
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食事量や栄養の偏り
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運動不足 → 筋肉量減少 → インスリン抵抗性↑
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急激な血糖上昇を招く生活習慣
やせていても糖尿病リスクはゼロではないことを理解し、生活習慣を見直す必要があります。
【耐糖能障害は治る?改善方法を紹介】
耐糖能障害は、適切な対策を取ることで改善可能です。
糖尿病への進行を防ぐには、早めの生活習慣の見直しがカギとなります。
● 生活習慣の改善ポイント
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食事は腹八分目を意識
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野菜中心のバランスの良い食事
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適度な運動(週150分以上の有酸素運動)
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体重を5〜10%減らす
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禁煙・節酒
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睡眠とストレス管理
また、定期的に血糖・HbA1cをチェックし、経過観察を継続することが重要です。
● 薬物療法について
原則、耐糖能障害では薬は不要です。
ただし、心血管リスクが高い場合などには「ボグリボース」などの薬剤を使用することがあります(保険適用あり)。
ただし、薬物療法よりも生活改善の方が同等以上の効果をもつと報告されており、費用対効果の観点からも生活改善が優先されます。
【まとめ】
耐糖能障害とは、血糖値が正常より高く糖尿病には至らない状態のことを指します。
「糖尿病予備軍」として、放置すれば糖尿病や合併症へ進行する可能性があるため、早期発見と生活習慣の改善が非常に重要です。
自分の検査値を振り返り、日常の食事・運動習慣を見直すことで、糖尿病の予防につながります。
薬に頼る前に、まずは生活から整えていきましょう。
【参考文献】
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糖尿病および耐糖能障害の診断基準 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
-
糖尿病とは | 糖尿病情報センター
-
糖尿病予備軍といわれたら | 糖尿病情報センター
-
糖尿病のリスクを高める要因は?|国際協力医学研究振興財団
-
食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに|順天堂大学