人生最後のダイエット

男性の肥満・睡眠障害は、男性ホルモンの低下が原因かも

「運動しても全然痩せなくなった」「夜中に何度も目が覚める」「昔のような元気が出ない」…こんな悩みを抱えている40代、50代の男性の方、意外と多いのではないでしょうか。

「年のせいだから仕方ない」と諦めてしまいがちですが、ちょっと待ってください。その症状、もしかしたら「男性更年期障害(LOH症候群)」が原因かもしれません。

実は、肥満と睡眠の問題は、男性ホルモン(テストステロン)の低下によって深く結びついているんです。今回は、なぜこれらの症状が起こるのか、そして何ができるのかを、分かりやすくお話しさせていただきます。

男性更年期障害(LOH症候群)とは

定義と発症メカニズム

男性更年期障害は、正式には「加齢男性性腺機能低下症候群(Late-Onset Hypogonadism:LOH症候群)」と呼ばれます。テストステロンの低下は、実はとても身近な問題です。30歳を過ぎると年間約1〜2%ずつ減少し、40代後半から50代にかけて体調の変化として現れることが多くなります(1)。女性の更年期障害と違って、男性の場合は変化が緩やかなため、気づかずに過ごしてしまうことが少なくありません。

診断に関しては、日本泌尿器科学会と日本Men’s Health医学会による診療の手引きでは、血中総テストステロン値が250ng/dL未満、または総テストステロン値が250ng/dL以上でも遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満の場合に治療を検討するとされています(2)。ただし、これらの数値は絶対的な基準ではなく、患者さんの症状や生活の質への影響を総合的に判断することが最も重要です。

主な症状

男性更年期障害の症状は多岐にわたりますが、主に以下の3つのカテゴリーに分類されます:

  • 身体症状:疲労感、筋力低下、体重増加、発汗、ほてり
  • 精神・心理症状:うつ状態、イライラ、集中力低下、不安感
  • 性機能症状:性欲低下、勃起不全(ED)、射精障害

これらの症状は相互に関連し合い、特に肥満や睡眠障害は身体症状の中核を成すものです。

テストステロン低下が肥満を引き起こすメカニズム

基礎代謝の低下

テストステロンは筋肉量の維持に重要な役割を果たしています。加齢とともにテストステロンが低下すると、筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。その結果、同じ食事量でも消費カロリーが減り、体脂肪が蓄積しやすくなるのです(3)。

内臓脂肪の蓄積

テストステロンには脂肪の蓄積を抑制する働きがあります。特に内臓脂肪の蓄積を防ぐ効果が知られており、テストステロン低下により腹部肥満が進行しやすくなります。内臓脂肪はメタボリックシンドロームの原因となり、糖尿病や心血管疾患のリスクを高めます(4)。

インスリン抵抗性の増加

テストステロン低下はインスリン抵抗性を引き起こし、血糖値の上昇や脂肪蓄積を促進します。これにより、糖質制限や運動療法を行っても体重減少が困難になる悪循環が生まれます(5)。

睡眠障害とテストステロンの関係

睡眠とホルモン分泌の関係

テストステロンの分泌は概日リズムに従っており、深い睡眠中に最も多く分泌されます。質の良い睡眠が取れないと、テストステロンの分泌が低下し、男性更年期症状が悪化するという悪循環が生まれます(6)。

睡眠時無呼吸症候群との関連

肥満男性に多い睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、テストステロン低下と密接な関係があります。無呼吸による酸素不足がテストステロン分泌を阻害し、一方でテストステロン低下が上気道の筋力低下を引き起こし、無呼吸を悪化させるという相互作用が認められています(7)。

当院で診療している患者様の中にも、睡眠時無呼吸症候群の治療とテストステロン補充療法を併用することで、両方の症状が改善した例を多数経験しています。

診断と検査方法

血液検査

男性更年期障害の診断には、以下の検査が必要です:

  • 総テストステロン値:最も基本的な指標
  • フリーテストステロン値:生物学的活性を持つテストステロンの測定
  • LH(黄体化ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン):下垂体機能の評価
  • その他:血糖値、HbA1c、脂質検査、PSA値など

症状評価スケール

客観的な症状評価として、AMS(Aging Males’ Symptoms)スケールやADAM(Androgen Deficiency in Aging Male)質問票を用いて、症状の程度を数値化します。

睡眠検査

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、簡易睡眠検査や終夜睡眠ポリグラフ検査を実施し、呼吸状態を詳細に評価します。

治療アプローチ

テストステロン補充療法(TRT)

適応が認められる場合、テストステロン補充療法が第一選択となります。注射製剤やゲル製剤があり、患者様のライフスタイルに応じて選択します。TRTにより筋肉量の増加、基礎代謝の向上、睡眠の質の改善が期待できます(8)。なお、テストステロン補充療法は、健美クリニックの関連クリニックの、大阪梅田紳士クリニックにて行なっています。両院とも大阪梅田にあり、徒歩数分の距離にあるため、医療ダイエットとホルモン補充療法を両立させることが可能です。

大阪梅田で男性更年期障害・男性ホルモン低下の治療|大阪梅田紳士クリニック

生活習慣の改善

  • 運動療法:筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせ
  • 食事療法:高タンパク質、低糖質を基本とした栄養指導
  • 睡眠衛生の改善:規則正しい睡眠リズムの確立

医療ダイエット(GLP-1受容体作動薬)との相乗効果

健美クリニックで行っているGLP-1受容体作動薬を用いた医療ダイエットは、男性更年期障害の治療において非常に有効です。体重減少により内臓脂肪が減ると、テストステロンの分泌が改善し、さらに基礎代謝が向上するという好循環が生まれます。

睡眠時無呼吸症候群の治療

CPAP(持続陽圧呼吸療法)により睡眠の質を改善し、テストステロン分泌の正常化を図ります。

予防と早期対策

セルフチェックポイント

以下の症状に複数該当する場合は、男性更年期障害の可能性があります:

  • 疲れやすくなった
  • 体重が増加し、特にお腹周りが気になる
  • 夜中に目が覚めることが多い
  • 以前ほど性欲がない
  • 集中力が続かない
  • イライラすることが増えた

生活習慣での予防策

  • 定期的な運動:週3回以上の筋力トレーニング
  • バランスの良い食事:亜鉛、ビタミンDを意識的に摂取
  • ストレス管理:適度な休息とリラクゼーション
  • 十分な睡眠:7〜8時間の質の良い睡眠

当院での治療について

男性更年期障害に伴う肥満や睡眠障害の治療では、一つの症状だけを見るのではなく、全体的な健康状態を改善していくことが大切です。

健美クリニックでできること

生活習慣病の治療

  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症の治療を行います
  • 血糖値や血圧が安定すると、男性ホルモンの分泌環境も改善されます

医療ダイエット

  • GLP-1受容体作動薬を使った効果的なダイエット治療
  • 内臓脂肪が減ることで、テストステロンの分泌が改善します
  • 週1回の注射なので、続けやすい治療法です

睡眠時無呼吸症候群の治療

  • CPAP療法による治療を行います
  • 睡眠の質が改善すると、夜間のテストステロン分泌も促進されます

紳士クリニックでできること

テストステロン補充療法(TRT)

  • 注射によるホルモン補充治療を行います
  • 定期的な血液検査で安全に治療を進めます
  • 筋肉量の増加と基礎代謝の向上が期待できます

男性特有の症状の治療

  • 性機能の問題やEDの治療
  • うつやイライラなどの精神症状の改善
  • 男性の悩みに特化した診療を行います

2つのクリニックで治療するメリット

より高い効果が期待できます

  • 生活習慣病の改善とホルモン補充を同時に行うことで、単独治療よりも高い効果が得られます
  • 医療ダイエットで体重が減ると、テストステロンの分泌も改善し、さらに代謝が上がるという好循環が生まれます

安全に治療を受けられます

  • 総合内科専門医が全身の状態を管理
  • 泌尿器科専門医・性機能専門医が専門的な治療を担当
  • 2つのクリニックで情報を共有し、副作用などにも迅速に対応できます

通いやすく効率的です

  • 同じ医療グループなので、検査結果などの情報共有がスムーズ
  • 無駄な検査の重複を避けることができます
  • 患者さんの負担も軽減されます

まとめ

肥満や睡眠障害に悩む30〜50代の男性の背景には、テストステロン低下による男性更年期障害が潜んでいる可能性があります。これらの症状は相互に関連し合い、放置すると生活の質の著しい低下を招きかねません。

重要なのは、単なる加齢現象として諦めるのではなく、適切な診断と治療により改善可能な疾患として認識することです。早期の診断と治療介入により、症状の改善だけでなく、糖尿病や心血管疾患などの将来的なリスクの軽減も期待できます。

当院グループでは、健美クリニックでの生活習慣病治療・医療ダイエット・睡眠障害治療と、紳士クリニックでのテストステロン補充療法を組み合わせることで、男性更年期障害の様々な症状に対応しています。

「最近体調がすぐれない」「ダイエットが思うようにいかない」「夜よく眠れない」といった症状でお悩みの方は、まずは健美クリニックで生活習慣病の検査や医療ダイエットのご相談を。男性ホルモンの詳しい検査や補充療法については、紳士クリニックでの受診をお勧めします。

それぞれの得意分野を活かして、あなたの症状改善をしっかりとサポートいたします。一人で悩まず、お気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Harman SM, et al. Longitudinal effects of aging on serum total and free testosterone levels in healthy men. J Clin Endocrinol Metab. 2001;86(2):724-731.

  2. 日本泌尿器科学会、日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会. 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き. 2018.

  3. Saad F, et al. Testosterone as potential effective therapy for obesity in men with testosterone deficiency: a review. Curr Diabetes Rev. 2012;8(2):131-143.

  4. Kapoor D, et al. Clinical and biochemical assessment of hypogonadism in men with type 2 diabetes: correlations with bioavailable testosterone and visceral adiposity. Diabetes Care. 2007;30(4):911-917.

  5. Grossmann M, et al. Low testosterone levels are common and associated with insulin resistance in men with diabetes. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93(5):1834-1840.

  6. Leproult R, Van Cauter E. Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men. JAMA. 2011;305(21):2173-2174.

  7. Bercea RM, et al. Erectile dysfunction, testosterone deficiency, and sleep apnea. Rom J Intern Med. 2018;56(4):201-209.

  8. Bhasin S, et al. Testosterone therapy in men with hypogonadism: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715-1744.