即効で血圧を下げる方法とは?水分や食べ物の効果的な摂り方も解説

普段から血圧が高めだと、「健康診断や診察の前だけでも、なんとか数値を下げられないか」と気になりますよね。なかには、「水をたくさん飲むと血圧が下がる」といった話を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
このコラムでは、まず血圧測定前にできることや、気になる「水分と血圧の関係」について解説します。後半では、高血圧の基本的な治療法にも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
血圧についての正しい知識を身につけ、日々の健康管理に役立てていきましょう。
即効で血圧を下げられるのは降圧剤のみ
結論から言うと、血圧を即効で安全に下げる方法は、医師が処方する「降圧薬」だけです。
高血圧は、生活習慣の見直しやストレスの緩和など、時間をかけてじっくり取り組む必要のある病気です。
ただ、測定前のちょっとした工夫で、本来の血圧に近い数値を出しやすくすることは可能です。例えば、次のような点に気をつけてみましょう。
-
トイレを済ませておく[1]
-
1~2分椅子に座って呼吸を整える[1]
-
病院には余裕を持って行く
膀胱に尿がたまっていると血圧は上がり、排尿すると下がる傾向があります。ですから、血圧を測る前にはトイレを済ませておくのがおすすめです。
また、血圧の変動には自律神経が大きく関わっています。不安や緊張を感じると交感神経が優位になり、血圧は上昇します。反対にリラックスしている状態では副交感神経が優位になり、血圧は落ち着いてくるのです。
特に、血圧測定で緊張しやすいという方は、測る前にしばらく安静にして、深呼吸をしてみるとよいでしょう。時間に余裕を持って病院へ向かうだけでも、気持ちが落ち着きますね。
血圧を下げるための効果的な水の摂取方法
「水をたくさん飲めば血圧は下がるのでは?」と考える方もいらっしゃるようです。しかし、残念ながら、ただ大量に水を飲んでも血圧は下がりません。
ここでは、「血圧と水分の関係」と「上手な水分補給のコツ」を見ていきましょう。
血圧と水分の関係
こまめに適量の水分を摂ることは、血圧の安定に良い影響があるといわれています[2]。ただし、一度に大量の水を飲むと血液の全体量が増え、かえって血圧が高くなるおそれがあるため注意が必要です。
水を飲みすぎると腎臓への負担が大きくなり、その働きが追いつかなくなることがあります。腎機能が低下すると、余分な水分を尿としてうまく排出できなくなり、結果として血圧が上がってしまうのです。
一方で、水分摂取が少なすぎるのも、脱水状態を招く危険性があります。
健やかな血圧を保つためには、適量の水分をこまめに補給することが大切なのです。
身体によい水の飲み方
私たちの身体の約60%は水分でできています。水分は、体温調節や老廃物の排出など、生命を維持するために不可欠な役割を担っています。しかし、実は多くの人が日々の生活で水分が不足しがちだといわれています[3]。
水分補給のポイントは、「早めに」「こまめに」摂ることです。脱水を防ぐためにも、就寝・入浴・運動の前後や、のどの渇きを感じる前に水を飲む習慣をつけましょう。
まずは1日の水分摂取量の目安として、「普段飲む量にコップ2杯分をプラスする」ことから始めてみてはいかがでしょうか。もちろん、環境や季節、汗をかく量によって必要な水分量は変わりますので、その時々で調整してくださいね[3]。
ご自身の健康を維持するために、いつもより少しだけ多めに水分を摂ることを意識してみましょう。
高血圧の原因とリスク
日本人の高血圧の主な原因として、まず挙げられるのが塩分の摂りすぎです。塩分は体内の水分量を増やし、血液の量を増加させることで血圧を引き上げます。
また、肥満、飲酒、喫煙といった生活習慣も高血圧の引き金となります[4]。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、治療の必要性を感じにくいのが特徴です。しかし、そのままにしておくと、下記のような深刻な病気につながることがあります。
-
脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)
-
心疾患(心筋梗塞、心不全など)
-
腎疾患(慢性腎臓病)
-
血管疾患(大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症など)[5]
高血圧がもたらす危険性を避けるためには、日頃から血圧を測定し、ご自身の数値をきちんと把握しておくことが大切です。
ただし、血圧は時間や状況によって常に変動しています。緊張や不安といった心理的な影響で、普段よりも数値が高く出てしまうこともあり、これを「白衣高血圧」と呼びます。
白衣高血圧の場合、ご自宅で測った血圧が正常値であれば、過度に心配する必要はありません。とはいえ、将来的に本格的な高血圧や心血管疾患へ移行する可能性は高まるといわれています[6]。
今や、日本の成人の2人に1人が高血圧といわれる時代です[7]。ご自身の体のために、高血圧の原因とリスクを正しく理解し、必要であれば適切な治療を受けて合併症を防ぐことが重要です。
血圧を下げるための効果的な方法
血圧を安定させるためには、生活習慣の改善が欠かせません。 ここでは、日常生活で血圧のためにできる工夫をお伝えします。
食事
食事は、血圧をコントロールするための大切な要素です。特に塩分を控えめにし、カリウムを積極的に摂ることで、血圧を下げる効果が見込めます。
カリウムは野菜や果物に多く含まれ、余分な塩分を尿として身体の外へ排出するのを助けてくれます。1日の塩分摂取量を減らし、カリウムをバランスよく摂ることで、血圧への良い影響が期待できるでしょう[7][8]。
ただし、腎臓の病気などで医師からカリウムの摂取を制限されている方は、必ず主治医にご相談ください。
毎日の食事で減塩を続けるには、いくつかコツがあります[9]。
-
漬物は控える(食べたい時は浅漬けにして少量に)
-
麺類の汁は残す
-
新鮮な食材を選び、素材そのものの味を活かす
-
味噌汁は具だくさんにして、野菜のうまみを引き出す
-
調味料は「かける」より「つける」を意識する
-
酢・ケチャップ・マヨネーズなどを上手に使い、味に変化をつける
-
香辛料や香味野菜、ハーブ、柑橘類などで風味豊かにする
-
外食や加工食品の利用を少し減らしてみる
実は、伝統的な日本食は、血圧コントロールに適した食事に近いとされています[8]。 日本食では、野菜や海藻、豆腐といったカリウムが豊富な食材が多く使われます。塩分の多い魚介類や発酵食品などは、小鉢や汁物で少量を楽しむようにすれば、塩分の摂りすぎを防げます。
食材そのものが持つ旨みや風味を上手に引き出してあげれば、塩分は控えめでも食事の満足感は十分に得られます。
食事は、血圧をコントロールするための効果的な治療のひとつです。減塩とカリウムの摂取を心がけ、血圧に優しい食生活を楽しみましょう。
運動
運動は、血圧を下げるのにとても効果的です。運動をすると、直後から血圧が4~5mmHg下がり、その効果は約22時間続くという研究結果もあります。
高血圧の改善に特に良いとされるのは、早歩き、ゆっくりしたジョギング、サイクリングといった有酸素運動です。「ややきつい」と感じるくらいの運動を、毎日合計30分ほど続けるのが理想です。一度に30分確保できなくても、10分を3回に分けて行うのでも大丈夫ですよ[10]。
運動は、血圧を安定させるだけでなく、肥満や糖尿病といった他の生活習慣病の予防や改善にもつながります。 さらに、体を動かすことは良い気分転換になり、ストレス解消にも役立ちます。ご自身が楽しめる運動を見つけて、ぜひ習慣にしてみてください。
節酒
アルコールの過剰な摂取は、血圧の上昇につながります。高血圧の予防や改善のためには、お酒の量を控えめにすることが大切です。
高血圧の方が飲む場合の1日のアルコール摂取量の目安は、男性で20~30ml/日(日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本)、女性はその半分の10~20ml/日以下とされています[11]。
適量のお酒は、気持ちをリラックスさせる効果もあります[12]。ご自身の飲酒量や飲む習慣を一度見直して、血圧に優しい付き合い方を実践しましょう。
禁煙
タバコもまた、血圧と深く関係していることがわかっています。 タバコを吸うと血管が収縮し、交感神経が刺激されます。それに伴い動脈硬化も進行するため、長期的に見ても血圧が上がりやすくなるのです。
また、喫煙は高血圧だけでなく、糖尿病やがん、呼吸器の病気の原因にもなるといわれています[13]。
そうは言っても、長年の習慣をすぐに断ち切るのは簡単なことではありませんよね。最近では、健康診断の場で禁煙指導を受けられたり、専門の禁煙外来を設けている病院も増えています。こうした専門家のサポートを受けることで、ご自身で取り組むよりも心身の負担を軽く、そして確実に禁煙を進めることができます[14]。
ご自身の未来の健康のために、禁煙への第一歩を踏み出してみませんか。
特定保健用食品(トクホ)の血圧への効果
最近、「血圧低下に効果がある」とうたうお茶や食品をよく見かけます。どれくらい効果があるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。 こうした食品は、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品と呼ばれています。
特定保健用食品とは、健康に役立つ一定の科学的根拠があると国(消費者庁)が認可し、許可マークの表示が認められた食品のことです[15]。
機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品のことです[16]。
これらの商品は現在100種類ほどあるとされ、カリウムやペプチドといった成分が血圧に働きかけるとされています。
しかし、これらの食品だけで血圧が劇的に下がるわけではなく、あくまでも治療の補助的な役割です。降圧薬に取って代わるほどの効果はないため、過度な期待は禁物です。
特定保健用食品には、1日の摂取目安量が記載されています。利用する場合は、この目安量をきちんと守ることが大切です。目安量を超えて摂取しても効果が高まるわけではなく、かえって副作用や健康被害を招く可能性もあるので注意しましょう。
こうした商品は、食事や運動といった基本的な生活改善を行った上での、プラスアルファのサポートと捉えておくのがよいでしょう。
まとめ
血圧をすぐに、そして安全に下げる方法は、降圧薬の内服以外にはありません。ですが、診察時などに緊張して血圧が上がりがちな方は、測定前にトイレを済ませ、1~2分椅子に座ってリラックスするだけでも数値が落ち着きやすくなります。
また、水分は摂りすぎても摂らなすぎても血圧に影響します。一度にがぶ飲みするのではなく、こまめに適切な量を補給するよう心がけましょう。
高血圧は、自覚症状がないまま静かに進行し、やがて深刻な病気につながる危険性があります。検査前だけといったその場しのぎの方法に頼るのではなく、日々の生活習慣を見直すことを基本に、腰を据えて血圧のコントロールに取り組むことが大切です。
当院では、高血圧をはじめとする生活習慣病に対して、お一人おひとりのライフスタイルに合わせたきめ細やかな診療を心がけております。健康診断で血圧の高さを指摘された方、ご自身の血圧管理に不安がある方は、どうぞお気軽に大阪梅田紳士クリニックにご相談ください。専門医がしっかりとサポートさせていただきます。
【参考文献】
[1] 家庭で血圧を測定しましょう|日本高血圧学会
https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf
[2] アジア初の研究を実施!習慣的な水分摂取が健康増進に効果があることを確認 | ニュースリリース一覧 | サントリー食品インターナショナル
https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1003.html
[3] 「健康のため水を飲もう」推進運動|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
[4] 高血圧治療ガイドライン2019、86P|日本高血圧学会
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_noprint.pdf
[5] 高血圧治療ガイドライン2019、116P|日本高血圧学会
[6] 高血圧治療ガイドライン2019、42P|日本高血圧学会
[7] 高血圧|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html
[8] 特定保健指導の対象とならない非肥満の心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン~生活習慣別保健指導の要点~|厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究「非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究」平成27~29年度総合研究報告書, 2018.P4
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2017/172031/201709003B_upload/201709003B0005.pdf
[9] 高血圧治療ガイドライン2019、P88~|日本高血圧学会
[10] 高血圧治療ガイドライン2019、P90|日本高血圧学会
[11] 高血圧治療ガイドライン2019、P91|日本高血圧学会
[12] アルコールの作用|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-003.html
[13] P11、禁煙支援マニュアル(第二版)増補改訂版|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual2/dl/addition01.pdf
[14] 禁煙治療ってどんなもの?|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-007.html
[15] 特保(特定保健用食品)とは?|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-01-001.html
[16] 機能性表示食品について|消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/