栄養素の基本のき「タンパク質ってなぁに」
前回、「炭水化物」についてお話させていただいたので、今回は三大栄養素の2つ目「タンパク質」に焦点を当てていきたいと思います。
私たちの身体は7割が水分でできていると言われていますが、次いで多いのがタンパク質です。身体は約10万種類ものタンパク質で構成されており、そのタンパク質自体はアミノ酸がたくさん結合したものでできています。ヒトの身体のタンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、その種類や量、組み合わせによって性質や働きのことなるタンパク質が作られていくのです。
余談ですが、タンパク質は英語で「Protein」といいます。名前の由来はギリシア語の「プロテイオス」、最も大切なものという意味です。一方、漢字では「蛋白質」と書きますが、「蛋」は卵を意味する言葉で、卵白にタンパク質が多く含まれることからつけられた名前と言われています。
次にタンパク質の働きについて3つ紹介していきます。
まず1つ目。タンパク質は臓器や筋肉など身体を構成する成分となります。アスリートや、よく筋肉トレーニングをする人がタンパク質(プロテイン)を多く摂っているのは皆さんも想像できるのではないでしょうか。筋肉を構成するだけでなく、身体の骨格や皮膚、毛髪、内蔵などあらゆる組織を構成する材料となっています。どの組織のタンパク質も合成と分解を繰り返しながら、身体の中で一定量を保っているのです。
続いて2つ目。酵素やホルモンなど、身体の機能を調節する成分になります。体内の代謝を担ったり、機能を調節したりするホルモン、神経伝達物質などもタンパク質でできています。赤血球中の酸素の運搬するヘモグロビンなどの血液成分、遺伝子、免疫物質もタンパク質の一種でできています。
最後の3つ目は、エネルギー源です。炭水化物や脂質より割合は少ないですが、分解されてエネルギー源として利用されています。1gあたり約4kcalのエネルギーを生み出します。
では、このタンパク質が不足したり、もしくは過剰に摂りすぎると身体にどういった影響があるのかについてお話していきます。
先程もお話したように、タンパク質は絶えず合成と分解を繰り返しているため不足してしまうと、ダイレクトに筋肉量の低下や肌、髪のトラブル、集中力や思考力の低下に繋がってしまいます。ダイエットや減量のために低カロリーの食事ばかりしていると、身体に必要なエネルギーを確保しづらくなってしまいます。体内に取り込むエネルギーが減少すると身体は生きていくために必要なエネルギーを筋肉を分解することで作り出してしまいます。何度も同じことを言いますが、筋肉を作る材料となるのはタンパク質であり、臓器も筋肉でできています。それにも関わらず、低カロリーの食事や高脂肪の食事を続けて体内のタンパク質を不足させてしまうと、結果として基礎代謝量が落ちて太りやすく痩せにくい体質を生み出してしまうのです。また、摂取した脂肪が消費されずに内蔵周りに溜まる症状、つまり「メタボリックシンドローム」のリスクを高めてしまうのです。
少しメカニズム的な話になりますが、タンパク質には窒素が含まれており、タンパク質をアミノ酸に分解する過程でフリーになった窒素はアンモニアに変化します。毒性の高いアンモニアを尿素に変換するのが肝臓の役割になります。その尿素は腎臓を経て、尿に混じって体外へと排出されますが、タンパク質を過剰に摂取すると窒素の処理のために肝臓や腎臓が酷使され、結果的に機能低下に及んでしまいます。実際のところ、機能低下といったもののそこまでの健康被害が起こるリスクは少ないと言われていますが、元々肝臓や腎臓の弱い場合は過剰摂取、激しいスポーツとともにリスクは上がるため注意が必要です。
最後にタンパク質とダイエットの関連ついてもう少し詳しくお話していきます。
ダイエットとして「高タンパク低糖質」が理想であると皆さんもよく耳にすると思いますが、実際にタンパク質を多く取ると良いとされる理由はダイエット中の大敵、「食欲」をコントロールする働きを持っていることが1つ挙げられます。脂質や高タンパク質を摂るとコレシストキニンという食欲を抑制するホルモンの分泌が増加することが分かっています。つまり大量の食事を取らずとも満腹感を得られるのです。また、タンパク質には脂肪を燃焼しやすくするという特徴もあり、しっかり運動することで筋肉量を減らすことなく脂肪を燃焼し、基礎代謝量をキープしながらリバウンドしにくい体づくりができるということです。
タンパク質が多く含まれている食品として例えば、お肉や卵が挙げられますがこれらは比較的カロリーが高いです。タンパク質を多く摂りたい一心で、たくさん食べてしまうと結果的にカロリーオーバーとなり肥満を招きます。カロリーを抑えつつ高タンパクなものの摂取するためには脂肪分の少ない食品を選んだり、油を必要以上に使ったりしないことが大きなポイントとなってきます。具体的にはお肉の中でも、鶏胸肉やささみ、豚ヒレ肉などは脂身が少ないですし、お魚やカッテチーズという脂肪分の少ない乳製品もあります。料理をする過程でも、茹でたり蒸したりすると余分な油を摂取せず、タンパク質をより効率的に摂取することができます。また、高タンパク質に特化した食品も多くあるため自分の運動量や生活強度に合わせて摂取を助けてもらうのも1つの手かもしれませんね。
このように高タンパク質のお話をするとどうしても他の栄養素のことを忘れてしまいがちになりますが、健康的な身体を維持していくためには果物や野菜から摂れるビタミンやミネラル、繊維質、栄養素の吸収を高めて細胞の成長を促す適量の脂質も不可欠です。何事もバランスを意識することが大事ですね。
では次回は三大栄養素の3つ目。「脂質」についてお話していきます。