人生最後のダイエット

栄養素の基本のき「脂質ってなぁに」

 今回は3大栄養素の3つ目、「脂質」についてお話していきたいと思います。

 

脂質というと「ダイエットの敵」というイメージがある方もいるのではと思われますが、実際に脂質は私たちの身体の中でどのような働きがあるのか、また、ダイエットのために脂質の摂取を減らしても身体に影響はないのか、など脂質の基本的なところから、普段の食生活やダイエットとの関連についてもご紹介したいと思います。

 

 

 まず「脂質」とは水に溶けず、有機溶媒(=水に溶けない物質を溶かす、常温常圧で液体の有機化合物。ex:エタノール、クロロホルム等)に溶ける物質のことです。私たちは脂質の大半を脂肪として摂取します。脂肪といえば一般的には「中性脂肪」のことを指します。中性脂肪には「脂肪酸」というものが含まれますが、中性脂肪を構成する脂肪酸の種類によって代謝の仕方や作用が異なります。脂肪酸は炭素、水素、酸素で構成されており、肉や乳製品の脂など常温で固体の「飽和脂肪酸」と、植物や魚の油など常温で液体の「不飽和脂肪酸」に分けられます。

 

 次に脂質の働きについてです。大きく分けて5つあります。

  • 脂質1gあたり9kcalを産生し、エネルギー源をとなる。皮下などに蓄えられ(皮下脂肪)、必要に応じて分解され、利用される。
  • 細胞膜や細胞内の微細な膜などを構成する成分となる。
  • 各種ホルモンや胆汁酸などの材料となる。
  • 脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)の吸収を促す
  • プロスタグランディンなどの生理活性物質(=生体の生命活動や生理機能の維持および調節に関わる化学物質の総称)の前駆物質として、種々の炎症の発生や抑制に関与する。

 

脂質の摂取が少なすぎると便が硬くなって排泄しにくくなります。脂質は腸内で脂肪酸に分解され、腸を刺激して排便をスムーズにするのです。さらにホルモンバランスの乱れやエネルギー不足はもちろん、皮膚炎、脳出血を引き起こす可能性があります。

反対に過剰に摂取すると皆さんもご存知の通り、エネルギー過剰となり肥満になる恐れがあります。また、動脈硬化、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病、糖尿病、大腸がん、前立腺がん、冠動脈疾患のリスクが増加します。

 

脂質を健康維持に役立てるにはその「量」と「質」に配慮していく必要があります。

食生活において肉や乳製品などの常温で固体の脂である「飽和脂肪酸」や、マーガリン・加工油脂などの「トランス脂肪酸」の摂り過ぎは、脳卒中や心臓病の原因となるLDLコレステロールを高くしてしまいます。

一方で、EPAやDHAを聞いたことがあるでしょうか。これは「不飽和脂肪酸」という種類で、植物や魚の油などが含まれ、常温で液体の油を指します。働きとしては血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減らし、HDLコレステロール値を上昇させる作用があります。

つまりアブラの中でも魚か肉か、等の違いで私たちの健康に大きな違いをもたらします。中性脂肪が溜まりやすい太り気味やメタボの方、そして糖尿病の方々は「アブラ」の選び方が非常に重要になってきます。

厚生労働省はこの魚油などの「n-3系脂肪酸」を1日に約2gを目安に摂取を勧めています。魚油の2gといっても想像つかないと思いますし、調理方法によっても若干変わってくるので具体的な例を挙げてみたいと思います。

鮭を例にします。100gの切り身を刺身で食べるとEPAが210mg。同じ量で煮物にすると199mg、焼くと192mg含まれます。1日2gと言われても摂取が難しく感じると思います。刺身であればまだしも、焼いたり煮たりの調理が大変でどうしても魚の摂取自体が少ない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。まずは1日3食の中でどこか1食に魚を加えるところから意識していくのでも良いと思います。

 

脂質は炭水化物やタンパク質の2倍のエネルギーを生み出してくれます。言い方を変えると少量であっても高カロリーであるためダイエット中は気になるところだと思います。ダイエットとして「糖質制限」もありますが、それらと一緒に脂質の摂取も減らしていくと身体のエネルギー不足やホルモンバランスの乱れなど悪影響を引き起こします。スナック菓子や脂っこい揚げ物などを摂りすぎる食生活は体脂肪を増やしてしまいますが、「良質な脂質」を含む食品を選べばダイエットの強い味方になると思います。

 

今回で3大栄養素のお話が完結しますが、どれも身体にとってとても重要であることを改めて知っていただけたでしょうか。ダイエットのためだけでなく、これを読んでくださっている方々の食生活の見直しになる1つのきっかけとなれば幸いです。

健美クリニックスタッフ

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